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7/Sep/2009 No.2 [愚痴]

 1ヶ月前から「愚痴」にUpしようと思っていたことがある。

それは日本化学会の機関紙である「化学と工業」の8月号(62巻8号)に掲載された
毎日新聞科学環境部の元村有希子氏の「大学院重点化は一体なんだったのか」という題名の
論説についてである。

日本化学会のサイト内にある当該論説のpdfファイル
http://www.chemistry.or.jp/kaimu/ronsetsu/ronsetsu0908.pdf

この論説を読んで思ったことは2つ


1つは、日本化学会の機関誌というメディアに、どういう目的でこの論説を執筆したのか理解しがたいということである。

具体的には、内容盛りだくさんで、論点がぼやけている感がある。
また、日本化学会の機関誌を読むのは、日本化学会の会員、すなわち大学の教員か学生、企業の研究員、理科の教諭、化学好きな人など読者が限定されている。
その中で大多数を占めるであろう大学の教員にとっては既知の事がほとんどで、釈迦に説法に近いような気がする。


2つめは、「何を今さら・・・」感などのズレを感じる。
具体的には、冒頭に上げた「末は博士か大臣か」というフレーズである。
はっきり言って時代錯誤も甚だしい。
石橋 敲が修士課程2年の時点、今から14年ほど前の時点で、
「末は博士か大臣か」というフレーズは過去の遺物(オークションもの)であって、
博士号は、

”足の裏の米粒”

とか

”原付免許未満(以下ではない=原付免許の方が価値がある)”

とか揶揄されていたのである。
世の中では、それほど使えないものではあるが、
研究者として最低限の資格と考えられているので、頑張って取得している人が多いのである。


次に、日本企業が博士課程修了者を必要としていないのは今始まった話ではない。
少なくとも15年前も博士課程を出たら民間企業への就職は難しいと感じていたし、
実際、簡単ではない。
大学院で閲覧できる求人情報を見ても、
ほとんどが修士修了者の募集を明示しているが、
博士課程修了者の募集を明示しているものは少ない。

そういう状況の中で、ポスドク1万人化計画で任期付きのポスドクのポジションを増やしても、
延命措置にすぎず抜本的解決にならないのは、
現在初めて分かったことではなく、当時すぐに分かることである。

元村氏は「博士が就職難になった」と考えているようであるが、
元々「博士は就職難」なのである。
上記のとおり民間企業への就職は容易ではなく、
大学や国立の研究所のポジヨンも限られているからである。
実際、以前耳にしたことがある石橋 敲のボスであった60歳強の4人の教授の若かりし日の話を思い出してみても、内2人は就職難を体験している。
残りの2人は運良く博士号取得直後ぐらいに大学や国立研究所の職を得ているが、
その内の1人から、石橋 敲は博士課程3年の時に、
博士号取得しても就職が如何に難しいかを長々と聞かされた思い出がある。


元村氏は、博士号取得者のほとんどが研究職を志望し、
科学記者、知財関連職、教員、企業家などの研究職、技術職以外の志望が10%を切っていることに対し、
えり好みと非難しているが、見当違いの感を拭いきれない。

理系において博士号は、大学や国立研究所での研究職を得る資格のようなものであり、
また国際的には僅かではあるが敬意を払われる事がある。
たとえば、国際的にも、博士号取得者は、Mr.ではなく、Dr.の敬称で呼ばれる。
極端な話をすれば、
最近見たTVでは、中村修二教授がまだ四国の民間企業の社員だった時の留学先で、
中村教授(現職)が当時博士号をもっていない事が分かったら、
歯牙にもかけてもらえなかったという再現シーンが出ていた。
また、以前、石橋 敲が共同研究をしていたゲルマン連邦共和国(仮名)系の会社勤務の研究員から聞いた話では、本国にある中央研究所では博士号所得者とそれ以外の人で食事をするテーブルが違うそうである。

前置きをここまでにして、元村氏は就職先がない弁護士や医師に対しても、
”就職先のえり好みをするな”
と言うのであろうか?
確かに、弁護士や医師が就職先に困ることはないと思うが、
最近の司法試験改革で以前よりもイソ弁先探しが難しくなったと聞いている。
その内、イソ弁先が見つからない弁護士も出てくるかも・・・

また、元村氏は、研究者以外の職として、科学記者、知財関連職、教員、企業家を挙げているが、
科学記者は大手新聞社合わせて年間何人採用しているのであろうか?
少なくとも毎日新聞社の新卒採用ページには、「科学記者」という単語はなかったが、
毎年決まった人数を定期的に採用しているのであれば、所属先のメディアで積極的に知らしめて、
就職先が無くてで困っている可哀想な博士号取得者を救済してほしい。
もし、毎年決まった人数を定期的に採用していないなら、論説で根拠に挙げるのは無責任であると思う。

次に大学では特許などの知的財産を扱うことがほとんどないので、
博士号取得者のスキルは知財関連職のスキルとのオーバーラップは少ないように感じる。
また、知財関連職を極めるには、博士号ではなく、弁護士資格か弁理士資格が必要である。

小学校から高校までの教員は、
一部の教育委員会では教員免許を持っていなくても博士号取得者を採用しているところがあると聞くが、
ほとんどのところは博士号ではなく、教員免許が必要である。
予備校や塾講師は教員免許が要らないため、
確かに、一時期、オーバードクターの就職先の最後の頼み綱になったことがある。
最近は少子化なのでどうなのだろうか

確かに、元村氏の言う通り博士号取得者や博士課程進学者に甘えある者がいることも事実である。
石橋 敲が博士を取得した10年前より、インターネットのサイトや書籍などで、
博士号取得者の進路の情報、
平たく言えば、このブログのようなオーバードクター、ポスドクの愚痴のサイトや求人サイトなどの
アクセシビリティが飛躍的に向上している。
また、日本化学会や応用物理学会などで博士号取得後のキャリアについての講演会なども、
10年前は皆無であったが、最近は時々目にする機会がある。
現在の博士号取得者や博士課程進学者には、このような情報を上手く利用してほしいと思っている。


新聞記者の論説であるならば、これまでに使い古された表面上の論説ではなく、
過去から現在の状況を精査し踏まえた上で、
論点を明確にした科学的、論理的な論説を執筆してほしいと思う。

今回の場合、最後の「産官学の不作為、猛省を」が中心の方が良かったのではないかと思う。
それまでの内容は既に言い古さてた事であり、読み手は当事者なのだから、
もっと短くすることが可能であったと思う。

たとえば、朝日新聞は2007年5月22日付で以下のサイトの記事を出している。
http://www.asahi.com/edu/university/zennyu/TKY200705220121.html


この愚痴ももっと科学的・論理的に書きたかったのであるが、
風邪で体調が悪かったことと、
長い任期付きの生活から脱して民間企業に就職して科学的・論理的思考力が落ちたようである。
その前に、文章力が無いのが問題であるが・・・
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